トイレと私。
今日は暑い。しこたま暑い。
色々と重なって本来ならお盆に入るはずだった今日も会社へ行かなければならない。
朝起きるがエアコンの効いた部屋のせいで暑さと向き合うことができない。
仕事にはほぼ普段着で出ているわけだが最近では大人っぽくみられたい…。社会人ってスーツとか着るのが普通なのかな…。と思うことが多いのでじゃあオフィスカジュアルを目指そうと会社で1人企んでいるわけだが今日はそうはいかない。
暑さに負けた。
半ズボンを取り出し、適当に合わせた服とニューバランスの靴を履いて行く。
結局、前と変わらない。
でも、午前勤務だし午後はそのまま出かけられるから良い。プラスに捉えよう。
と言い訳をしながら必死にもがく。
そして、会社までの道のりで見かけるこの暑さでもスーツで働く方々に心の中で最敬礼をする。
会社に着いてやることはいつも通りである。
いつも通りをこなすことが私の作業において重要なことなのである。そんないつも通りの作業を終え、いざ買い物へ。
マスクと顔が一体化しているんじゃないかと思うほど汗っかきな私は必死に冷房の効いた場所を探す。
ランニング用の靴やウェアを買おうとスポーツ用品店に来たものの案の定優柔不断が働き、買うのやめてしまった。
そして、帰ろう。と思った時、トイレに行きたくなった。
これはお昼に食べた油そば中盛りだ。
つまり、食べ過ぎた。
言わずもがな大きい方である。
遅ればせながら本題はここからである。
スポーツ用品店の看板に指示されたトイレへ向った。
大体、外のトイレの大用なんていうのは誰かが入ってることの方が多い。そして、そこのトイレは小便器が2つ、大便器が1つだった。
しかし、誰も居ない。
ラッキーだ。早速さと便所に入り、事を済ます。(ここでいう「事を済ます。」は如何わしい行為という訳ではない。)
トイレットペーパーを回している時だった。
外から凄い息の荒い人が入ってきた。
漏れるかもしれなかったから走ってきたのだろう。便所は私が使用中だから早くでてあげなければと思った。
しかし、用を足している音はせず息が荒い彼の声だけがする。
(おかしい。何かがおかしい。)
私はそう思いながらもゆっくりとトイレットペーパーを回す。
すると、息の荒い彼は荒い声と同時に若干喘いでいるのではとも取れる声を出すのであった。
(おいおい。まさかこんな所で如何わしい何かをしてるんじゃないか!?勘弁してくれ…。)
私はそう思いながらもゆっくりとトイレットペーパーを回す。
しまいには気持ち良い…。と言う始末。
(これは確定か?如何わしい行為確定か?違うのか?ひぇ…。)
私はそう思いながらもゆっくりとトイレットペーパーを回す。
しばらくすると水の音がする。手洗いの水だ。
しかし、彼はまだ息が荒い。
その時には私はもう全て事を済ませていた。しかし、ここで流して音をたててたらなんか殺されるんじゃないかと思ってしまいただ立ち尽くし、密室の空間で彼が出ていくのを私に流してもらえないブツと待った。
…長い。いくらなんでも長い。
彼がこのトイレに入ってきたのは私が大をし終えてトイレットペーパーを回すという後半でもうかれこれ5分以上は経過している。
(何をしているかは分からないが早く出てってくれ…。)
そう思いながら立ち尽くす私と中々流してもらえないブツ。
思いとは裏腹に聞こえた声。
どうやら今度は気性が荒い。
何かぶつくさと言っているようだが声は聞こえなくなった。
そして、ようやくトイレに静寂が戻った。
トイレの入り口のドアが引き戸だったので出ていったかが音では判断できないが声が聞こえなくなったので勇気を出して流す。
さよならブツ。
ちょっとの時間だったけど相棒だったよ。
君は。
そっと鍵を開け出てみると彼はいない。
そして、手洗い場を使おうと見てみると水が床にも飛び散りびしょびしょであった。
何が起きたかは分からないが事故現場だ。
匂う!!匂うぞ!!これは事件だ。
私のブツより匂うな…。
外に出てあたりを見回すがもう彼は当然いない。
暑い夏に少し体が冷めた。
汗はひかない。
心だけ。